自動ドア安全ガイドライン

全国自動ドア協会により、「自動ドアを利用する通行者の安全性の向上を図ること」を目的とした「自動ドア安全ガイドライン」が策定されています。自動ドアは設置環境がさまざまなため、安全性の確保は自動ドア自体の対策だけでは不十分であり、設置計画から保守管理まで各段階における関係者(建築設計者、発注者、建物管理者)のご理解とご協力が必要です。

スライド式自動ドアの安全ガイドブック(1.04MB)

このガイドブックは「自動ドア安全ガイドライン(スライド式自動ドア編)」の要旨を説明するものです。

多機能トイレ用自動ドアの安全ガイドブック(3.25MB)

このガイドブックは、「多機能トイレ用自動ドア安全ガイドライン」の要旨を説明するものです。

「自動ドア安全ガイドライン」についてのご説明

全国自動ドア協会(Japan Automatic Door Association略称JADA/会長:本田侑三ナブテスコ㈱顧問)は、2006年4月1日以降施工分より適用する「自動ドア安全ガイドライン」(以下「ガイドライン」)を公表いたしました。
 「六本木において発生した大型自動回転ドアの痛ましい事故」以来、社会的に建物の安全に対する関心が高まったことを踏まえ、自動ドアの各メーカーが、単独に取組んできた安全対策を、業界全体として統一した対策として策定しています。
 今回発表した「ガイドライン」は、「自動ドアを利用する通行者の安全性の向上を図ること」を第一の目的としています。
併せて、現在普及している最新の技術レベルで、各自動ドアメーカーが実施できる最大限の安全対策を行える内容でまとめています。
 もちろん、このガイドラインを守れば安全と言うことでは無く、設置環境に応じた安全対策を関係者(建築設計者、発注者、建物管理者)とともに作りあげていくことが肝要と考えています。

自動ドアの事故の傾向

≪事故の主なパターン≫
自動ドアの通行者事故は小さな子供や高齢者に多く、傾向としては「駆け込み」「立ち止まり」「斜め進入」によるものが半数以上を占めています。

1. 駆け込みによる衝突
閉じ途中の自動ドア、または開き途中の自動ドアに急いで駆け込み衝突。
2.立ち止まりによる挟まれ
自動ドア走行部で立ち止まっていて、閉じてきた自動ドアに挟まれた。
3. 斜め進入による接触
閉じ途中の自動ドアに斜めから進入して、反転した自動ドアが開ききらないうちに接触。
4. 戸袋側進入による衝突
子供が自動ドアの戸袋側で遊んでいて、開いてきた自動ドアに衝突。
5. 引き込まれ
子供が自動ドアに触って遊んでいるうちに自動ドアが開いて、自動ドアと方立の間に手を挟んだ。

このような事故を防ぐには、どのような人が自動ドアを利用するかという通行者の傾向及び通行動線や周囲の状況などを把握した上で、適切な仕様決定と安全対策および保守・管理を行うことが必要です。

自動ドアガイドラインの要旨
目的
自動ドアを利用する通行者の安全性の向上を目的とします。本目的を満たすには、自動ドアの供給者のみならず、建築設計者・発注者・建物管理者の理解と協力が必要となります。
適用自動ドア
ドアの総質量が片引きで150㎏未満、引分けで300㎏(150㎏×2枚)未満のスライド式自動ドアに適用します。 (開き戸、折り戸などは対象外)
用語の定義
① 有効開口幅:開口部の通行可能幅を表す。
② 存在検出範囲:自動ドア開閉時ドア走行部およびドア直近の通行者を連続または一定時間検出することを目的としたセンサーの検出範囲。
③ 起動検出範囲:自動ドアを通ろうとする通行者を検出することを目的としたセンサーの検出範囲。
④ 通行動線:ドアを通過する人の方向や軌跡を表す線。
⑤ 補助光電センサー:ドア走行部の存在を検出する目的で、補助的に用いられる光電センサー。
⑥ 防護柵:斜め進入による衝突を防止する意図で用いられる柵。
⑦ 防護柵:戸袋側における衝突を防止する意図で用いられる進入防止の為の柵。
⑧ 戸袋:開閉ドアを収納するためのスペース。
建築設計者・発注者・建物管理者へのお願い
自動ドア周辺での計画
自動ドアの設置計画を行うにあたっては、「周囲のスペースの確保」「適切な通行動線の確保」「視認性の確保」「すべり、つまずき対策」「有効開口幅」「戸袋側への配慮」「指挟み防止の配慮」を充分吟味した上で計画を立てていただくのが望ましいと考えています。
自動ドア建具での計画
自動ドア建具の設計段階では、「安全ガラスの採用」「衝突時のリスク低減対策」「引き込まれ防止対策」を検討した上で、適切な仕様を決定していただくのが望ましいと考えています。
建物管理者へのお願い
自動ドアを常に良好な状態で運用するためには、定期的な点検や調整・部品交換は欠かせません。 運用面での安全性確保の観点からも「マニュアルによる管理」「調整・設定変更の禁止」「点検・整備などの実施」「点検・整備の契約」「事故の対応」「利用者に対する注意喚起」を実施願うことを推奨いたします。
自動ドア供給者が行う安全対策

自動ドアの事故の傾向では、小さな子供や高齢者が半数を占めていることや、殆どの事故がドアへの衝突・挟まれ事故によるものです。ガイドラインでは、これらの事故を防ぐ対策として、「挟まれ防止対策」「衝突防止対策」を策定し、高齢者・障害者・子供連れに配慮した内容でまとめています。

自動ドアの開閉速度及び開放タイマーの設定値≪挟まれ防止・衝突防止対策≫
開き速度
500㎜/秒以下に調整する。但し、障害者・高齢者・子供連れなどが多く利用する出入口の場合は、400㎜/秒以下に調整することが望ましい。
閉じ速度
350㎜/秒以下に調整する。但し、障害者・高齢者・子供連れなどが多く利用する出入口の場合は、250㎜/秒以下に調整することが望ましい。
開放タイマー
起動センサーOFF後の開き動作保持タイマーは通常1~5秒に設定する。但し、障害者・高齢者・子供連れなどが多く利用する出入口の場合は、可能な限り長く設定する。
ドア走行部における存在検出範囲の設定値≪挟まれ防止・衝突防止対策≫

ドア走行部における、通行者の立ち止まりなどによる挟まれ事故を防止する観点から、起動検出範囲と存在検出範囲間の不感知帯(死角)を持たせないことが望ましい。(図-1)
人や物の存在検出を行う方法として、動体と静止体を検出できる補助センサーにより検出しドアの開放状態を継続させます。

存在検出範囲から起動検出範囲(ドア直近)
150㎜未満に調整することが望ましい。※設置環境上不可能な場合は、閉じ速度250㎜/秒以下に設定する。
静止体検出時間
通行者の立ち止まりを考慮して10秒以上に設定する。
補助光電センサーの設置高さ
1光線の場合は、床面から200~700㎜の範囲に設置する。但し、障害者・高齢者・子供連れなどが多く利用する出入口の場合は、複数光線を設置することを推奨します。

図-1.ドア走行部における存在検出例(補助光電センサーが方立及び縦枠間に設置された場合の対策)

起動検出範囲の設定値≪衝突防止対策≫

自動ドアへの駆け込み及び斜め進入を未然に防ぐ対策として、起動検出範囲を各設置条件に応じ設定しています。(図-2)

ドアに向かって直進方向の起動検出範囲
ドア中心より1000㎜以上とする。※設置環境などで、上記の直進方向の起動検出範囲が守れない場合は、閉じ速度を250㎜/秒以下に設定し、ドアの中心から500㎜以上を確保する。
静止体検出時間
通行者の立ち止まりを考慮して10秒以上に設定する。
ドア開口幅方向の起動検出範囲
・防護柵が有る場合など通行者が直進しか出来ないと特定できる場合は、自動ドア有効開口幅-右側125㎜-左側125㎜以上とする。
・片引きで戸先に壁が有る場合は、自動ドア有効開口幅-戸先側125㎜+戸尻側150㎜以上とする。
・引分けの場合は、自動ドア有効開口幅+右側150㎜+左側150㎜以上とする。
※設置環境などで、上記の開口幅方向の起動検出範囲が守れない場合は、閉じ速度を250㎜/秒以下に設定し、戸先に壁などがある場合を除き、最低限有効開口幅以上を確保する。
タッチスイッチを使用する場合
タッチスイッチを起動用検出装置として使用する場合は、連続通行者を考慮し、自動検出方式のセンサーを併用します。自動検出方式のセンサーは、タッチスイッチを起動してからドアが閉じ終わるまで有効に作動します。検出範囲は、起動検出範囲と同様とします。

図-2.起動検出範囲の例

建具の構造及び隙間の指定≪指挟み及び引き込まれ防止対策≫

下図のような指が挟まれない最小寸法30㎜以上の隙間の確保及びドア面は引っかかりの無い形状を推奨します。

① 全開時に戸先かまちと方立の間に30㎜以上の隙間を設ける。
② ドア付タッチスイッチと方立の間に30㎜以上の隙間を設ける。
③ 全開時に戸尻とたて枠又は壁との間に30㎜以上の隙間を設ける。
④ ドア走行時に手や腕が引き込まれないように、ドア面は格子などの引っかかりが無い形状とすることが望ましい。
以上がガイドラインの要旨です。
尚、自動ドアの施工及び点検・整備は、自動ドア全体の機能の安全性、耐久性に影響します。
従って、これらの作業は専門の技術を持った自動ドア施工技能士が自ら行うか、または技能士に指導を受けた作業者が行うものとしています。

今後の課題

今回のガイドラインは自動ドアの総需要の大部分を占める、建物用スライド式自動ドアに限定していますが、今後、開き戸・円形ドアなどの各種自動ドアについても「安全ガイドライン」の作成が急務と考えています。 尚、ガイドラインの指示を守れば事故を皆無にできるものではありません。現場用途に応じた安全対策を関係者も含め検討していく必要があります。