定期メンテナンスの必要性

定期メンテナンスの必要性
自動ドア設備を安全・快適にご使用いただくためには定期的なメンテナンスが必要です。

自動ドアは不特定多数の方が使用される設備です。通行者が安全・快適にご使用いただくためには、定期的に検査・調整を行い、不具合箇所があれば予め是正しておくことが必要です。

建築基準法第8条(維持保全)
建築基準法では、建物の維持保全に関し「建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない」と定めております。建物の所有者・管理者は、状況に応じた補修・改修をして安全で良好な状態の維持に努める「責任」があります。
自動ドアの保全に関する基準
建築基準法および官公法に定められた国の建築物等の定期点検の概要
●建築保全業務共通仕様書(平成25年度版)国土交通省大臣官房官庁営繕部
項目 点検周期
2.2.9 外部用自動ドア
2.3.6 内部用自動ドア
3か月に1回(年4回点検)
6.3.3 防火戸・防火シャッター 6か月に1回(年2回点検)
●官公法第13条第1項に基づく「国家機関の建築物及びその附帯施設の保全に関する基準」(平成17年国土交通省告示第551号)の実施
●国家機関の建築物等の保全に関する基準の実施に係る要領第6項
項目 点検周期
第6 支障がない状態の確認(自動扉) 3か月に1回(年4回点検)
  • 施設保全責任者または保全担当者により確認を行う
  • 外部委託している場合は点検結果の記録の確認を行う

別表(支障がない状態の確認の項目、方法、結果の判定基準)

(い)確認項目 建具/自動扉その他自動的に開閉するもの/自動扉の作動
(ろ)確認方法 目視及び建具の開閉具合等により確認
(は)判定基準 センサー、制動装置その他の安全装置に作動不良があること
(に)確認周期 3か月
(ほ)災害後の確認優先順位 I次(I次を優先事項。II次、III次の順に行うものとする)
全国自動ドア協会(JADA)自動ドア保守基準
●自動ドア保守基準並びに自動ドア保守基準解説(JADA J 003)
項目 点検周期
P-4 引き戸自動ドア
P-5 開き戸自動ドア
3か月に1回(年4回点検)
●自動ドア安全ガイドライン(スライド式自動ドア編)(JADAB0005)制定2005年4月1日、実施2006年4月1日

3.2.3 自動ドア施工及び点検は、自動ドア施工技能士が自ら作業するかまたは技能士に指導を受けた必要な技術力を有する技術者が行うことを規定
4.2. 年4回の定期的な点検・整備を推奨
4.3. 自動ドア供給者との定期的な点検整備に関する契約締結を推奨

知っておきたい建物の管理責任
民法第709条(一般不法行為責任)【建物の安全配慮義務】
建物の所有者等が、建物等の安全性に配慮すべき義務を怠った過失に基づき損害が生じた場合、一般不法行為として損害を賠償すべき責任を負うことになります。
1.事故の「予見可能性」をまず判断し、
2.それが認められれば、「結果回避可能性」があるかを考慮し、
→ その結果として、当該結果回避の義務を怠ったことが過失に該当します。
民法第717条(工作物責任)【建物所有者の無過失責任】
建物の本来有すべき安全性を欠いていることにより、第三者の安全をおびやかしたり損害が生じた際は、「占有者」は、定期的に点検等を行っており、損害の発生を防止するのに必要な措置を講じていたことを証明しない限り、その損害を賠償する責任を負うことになります(過失責任)。
そして、そのような証明があった場合には、建物の「所有者」が賠償の責任を負わなければなりません(無過失責任)。

※所有者は、建物の設置管理等に過失はない(十分に注意を払っていた)場合でも免責されません。

自動ドアの役割と点検の重要性
自動ドアの様々な役割と機能の一例
【避難経路】パニックオープン仕様自動ドア

災害発生時にドアを開放させ、避難経路を確保します。

【延焼防止】パニッククローズ仕様自動ドア

火災時にドアを自動閉鎖させ、延焼防止のための「防火区画」を形成します。

【セキュリティ】電気錠付自動ドア(金融機関、共同住宅、オフィスビルetc.)

電気錠(オートロック)にてドアを施錠し外部からの通行を制限します。

【衛生管理】エアシャワーブース・クリーンルーム入口の自動ドア

食品・薬品・化粧品・精密機械工場などの出入口に設置。ドア開閉の制御にて外部からの異物進入を防ぎます。

【バリアフリー・ユニバーサルデザイン】多機能トイレ

車イス使用者の方や様々な方が利用する多機能トイレの自動ドア

【バリアフリー・ユニバーサルデザイン】各種自動ドア

小さいお子様やお年寄りまで不特定多数の方が通行する自動ドア

自動ドアは、様々な用途の建物にそれぞれの役割をもって設置されています。もし、これらの自動ドアが整備不足による故障・不具合などで、それぞれの役割を果たせずに、
「火災の際に開かない(閉じない)」「閉じ込められてしまう(通行できない)」「施設利用者が怪我をしてしまう」 というような事故が発生してしまうかもしれません・・・。
建物の所有者・管理者は、万が一に備え、自動ドア装置の点検整備を定期的に行い、不具合の兆候が見られた場合は修繕を行い、個々のドアに要求されている機能・性能が常に正しく発揮できる状態を保つ責任があります。
検査が法制化されていない自動ドアですが、定期的なメンテンナンスは「必要」です。
自動ドア管理上のポイント
管理者責任に関係する管理上重要と考える事項
管理者責任に関係する判定のポイントとして以下の事項が考えられます。
1.建築設備の管理・保全の実施事実
2.管理業務の記録保管
3.「駆け込みや立ち止まり」等危険行為に対する表示、警告
4.建築関連法規、業界団体の指針などに沿った安全対策を講じているか
事故が発生した場合は上記の1、2、3、4についての事実が法的責任に影響を与えると考えられます。
専門業者又は建築・設備等の知識・技術を持った方が自動ドアの検査・調整を定期的に行い、自動ドアの正常な作動(機器本来の性能が維持されているか、設置時に施した安全対策が正常に作動しているか)を確認し、その結果を記録に残し、不具合があった場合はその改善に努められる事が必要です。
また、製造物責任の所在を明確にさせるとともに、点検整備後の一貫した保証を持たせる為に、
5.「設置業者」に保守管理業務を委託する
ことも管理上の重要なポイントです。
定期メンテナンスのメリット
故障の予防
専門技術者による定期的な点検・診断は、機器の小さなコンディションの変化を見逃しません。ドアの故障による機会損失などのトラブルも未然に回避することができます。
快適性の維持
通行者が通る度に開閉動作を繰り返す自動ドア装置は日々性能の劣化が進行しています。定期点検整備の実施により、設置当初の快適な状態を長く維持することが可能です。
寿命の延長
定期的な点検整備と適切な予防保全の実施は、突発的な不具合を防止するとともに、機器の性能低下を防ぎ、装置全体の劣化速度をゆるやかにします。
安全性の確保
日常点検に加え、専門業者による点検整備を定期的に実施することで、自動ドアを常に安全に安心してご利用いただくことができます。
ランニングコストの低減
定期的な点検整備の実施により、突発的な費用発生を回避することができます。計画的に適時適切な修繕を行うことは、機器の寿命を延長し、大きな修繕に至ることがないため、結果としてトータルコストの削減につながります。